第7章 悪者マリオネット
ダレルが催促するようにそう訊けば、は唸り声を零した。
やります、を隔てるのは覚悟。
悪者になりたい、という理由と勢いだけで入ったGrImMs。 人も殺したことがない。 窃盗もしたことがない。 だからGrImMsにとってはいてもいなくてもいい曖昧な邪魔者。
__また、居場所がなくなってしまう。
「あ……」
存在していない彼女はゆっくりと口を開いた。
「やります。 その仕事、私にやらせてください!」
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「……また夢に彼女が出てきたんだ…………。 醜い亡霊の姿で、俺の体を蝕むんだよ」
赤黒い月明かりに照らされた青年は、ゆったりと水滴のようにして揺れる。
「助けて欲しい。 蝕まれた部分が凄く痛くて……物足りないんだよ。 金や宝をそこに埋めても治らなくて……」
寂しがりやな吸血鬼を思わせるような後ろ姿。
「彼女の呻き声が頭から離れないんだよ……」
吸血鬼は牙から血を垂らして、泣き崩れた。
「夜が怖い。 死んでしまいたい。 彼女が俺を無理やり引きずり込もうとするのが怖くて、まだ死ねないけど……。 何事もなかったかのように消えてしまいたい……」
「アイヴィー、アイヴィー・シャムロック。 愛しの亡霊。 僕は朝日を受けて灰になりたいよ」