第1章 悪者シンドローム
べしゃっとが転ぶと同時にメリルのドレスには、ピッと小さな傷ができた。
__それは一瞬の出来事。
「え…………」
メリルは勿論、転んだも見ていたギディオンも目を見開いてメリルの切れたドレスを見た。
「は? 掠った……?」
そこには確かに傷がつき、メリルが言った条件の掠りに入る。
但し明らかなる偶然。実力なんかではない。
不覚の一撃に、メリルは俯いて怒りに肩を震わせた。
「い、今のは無しだよね? リーダー」
「いや……えーと、なあ」
明らかにドレスを切られて不機嫌、とばかりの態度を見せるメリルの声にギディオンは困惑した。
確かに今のは本当にタダのまぐれである。しかしルールにはまぐれがダメともない。
その数十秒、審判であるギディオンは悩んだものの、転んだ体勢のまま合格という言葉を待つのキラキラした瞳と目があってしまいギディオンは眉を下げた。
「……合格、じゃない?」
やがて発せられたその合格通知に、誰もが苦笑いをした。