第7章 悪者マリオネット
「ギディ、あの子に彼女のことが知られているの分かってるんですか……?」
「おー、まあ、いつかはバレると思ってたけど早いな。 カーシーか?」
「そのようですけど。 どちらも殺してしまった方がいいですかねえ」
早朝7時。
玄関ホールにてギディオンとロカは二人でソファーに腰を掛けながら小声でそんな話をしていた。
「……いや、はダメだ」
ギディオンは眉を寄せると、ロカの包帯が巻かれた腕に優しく触れた。
「入団試験のとき、何となくって思ったけど……やっぱり……」
何か言いたげにした後、静かに口を閉じた。
「……ギディは相変わらずおバカさんですね」
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その日の早朝会議にの姿はなかった。
誰もそれを咎めることなく、会議は淡々と続いていく。
レイアクトリアと最近巷で話題になっている大金持ちの貴族。 今回の標的である。
ただし、今最もGrImMsに狙われやすい一族と噂され警戒体制も完璧であるが故、有り金を全部持っていくのは無理そうだ。
だから今回は目標を一絞りにすることに__。
“アークの水晶玉”
売れば億単位にも達するレイアクトリア一族の家宝。 これだけを奪いにいくことにした。
「でも家宝となると相当厳重に守られてるんでしょ? 流石に百人位いる兵士をこの少人数で押し切るのは辛いよ?」
「まあ、俺も最初はそう思ってレイアクトリアは諦めてたんだけどさ。 この前カーシーの奴が吐いたんだよな」
「なにを?」
「アークの水晶玉は万一の時の為に本館にフェイクを置いてあって、本物は奥の裏倉庫にあるらしいんだよ。 勿論鍵とかはついてるけど怪しまれたりしないように警備の数は少ないらしい」
ギディオンは八重歯を見せて不敵に笑うと人差し指を立てて作戦を説明した。
「本物にいくのは一人でいい。 本館でフェイクに騙されたフリをして暴れているうちに、警備がいなくなった倉庫のカギを壊してアークの水晶玉を盗んで退散」
「はあ? そんな単純でいいわけ?」
「いいんだよ、どうせ成り上がりのバカ貴族だしな。 それにダリルにサポートを任せるから安心して作戦を実行すればいい」
得意げに語るギディオンをどこか呆れたように見つめながらメリルが腕を組む。