第19章 離したくない
私達が、ダンス会場の近くまで、戻って
くると、軽快なワルツが聞こえてきた。
二人で、ダンス会場をのぞいてみると。
皆が、楽しそうに踊っている。
黄瀬「のんびりし過ぎたっスね。
優希っち、ゴメン・・・。」
隣りにいる、涼くんをみてみると。
なんかシュンとして元気がない。
『そんな、謝らないで。
一曲だけで、終わりじゃないし。
踊れるチャンスは、まだあるから
元気出して?ね?』
私は、背伸びをして高い位置にある、
涼君の頭を、なでてあげる。
『いいこ、いいこ』
涼くんは、もともと大きい目を
さらに、大きくして、固まってる。
もしかして、髪とか触られるの
駄目な人?
それに、子供っぽすぎたかな?
ごめん。と、謝ろうと口を開きかけた
瞬間。
黄瀬「反則・・・っスよ。もぉ~。」
身体に、トンっと重みがかかる。
何で?こんな状況に?
私は、涼くんに抱きしめられてる。
『あの・・えっ・・と、涼くん?
誰かに見られちゃうよ?』
黄瀬「イヤなの?」
涼君の、顔が私の肩あたりにあって、
首筋に吐息がかかって、くすぐったい。
それに、胸がドキドキしてうるさい。
『ううん。嫌じゃないよ、でも。
噂になったら・・・。
涼くん、すごくモテるし。
それに、ファンの子の目とかあるでしょ?
困らない?
モデルさんだし、色々とこう問題がぁ。
だから、離して?』
だって、私達が抱き合っているのは、
ダンス会場の入り口付近な、わけで。
この壁の向こうには、
たくさんの人がいるのだ。
誰にも、見つからない何て事は、ない。
奇跡でも起きない限り。
好きな人に、ギュッと抱きしめられて
嬉しい気持ちは、勿論ある!
だけど、明日からの
私の学校生活は、平穏だろうか?
黄瀬「離したくない。もう少しこのまま。
可愛すぎるのが悪いんスよ。」
『う・・・ん。』
黄瀬「オレは、本気で。
優希っちが好きなんっスよ。
むしろ、噂になるなら本望って、ゆーか。
それに、モデル事務所的にも
問題ないっスから!
うち、恋愛禁止じゃないし。
スタッフさんから、応援されてるくら
いっスから。
だから、俺だけを見て欲しい。」