第6章 finale
その頃、波の静かな海辺で、シャロンは泣き濡れた体を抱いていた。
水面は月の光を反射し宝石のようにキラキラと光り、水底は吸い込まれそうな程深く暗い。
どこか懐かしささえ感じる波にひと時今を忘れて物思いに耽る。
数時間前のこと。
北の大陸に着いて、海辺に沿って歩いていると、再びセフィロスに出会った。
彼の衣服には血がこびりつき、いかに凄惨な殺戮を繰り返してきたのかがうかがえた。
「セフィロス……」
「ここまで辿り着いたか」
「ねぇ、もうこんなことはやめて。私にできることがあるならする……私に償える罪は償う……」
「……ならば、私の物になれ。そうすれば、星への復讐をやめることも考えよう。二人だけの世界で、共に暮らさないか」
彼は優しい表情を浮かべた。それはきっと本来彼が持っていた一面。人の欲がセフィロスを苦しめ、壊してしまった。
「北で待っているぞ。シャロン……」
セフィロスはそう告げ、横を通り過ぎていく。シャロンが振り返ると、彼の姿は消えていた。
「きっと私には償いきれない。セフィロス……どうしたらあなたの苦しみは癒されるの……」
シャロンの頬を涙が伝う。
涙の雫が輪郭をつたい零れ落ちた時、森の奥からシャロンを呼ぶ声が聞こえた。
「シャロン!」
胸が大きく脈打つ。忘れてしまいそうな程昔の記憶。
けれどはっきりとわかるのだ。声を聞けば胸の奥からあの気持ちが蘇る。
素直なシャロンはこの瞬間に浸ることもなくすぐさま振り返った。
「ヴィンセント……!」
心に迷いが生じて駆け出す事が出来なかった。
しかし彼女が駆けずとも、既にシャロンの身体はすっぽりと大きな身体に包み込まれていた。
ヴィンセントの胸に顔を埋めて何度も名前を呼ぶと、涙がとめどなく溢れた。
「本当にあなたなのね? よかった、よく無事で……」
姿を確認するように顔を見上げ頬に触れる。
「君も……。こうしてまた会うことが出来るとは……。随分長い間、一人にさせてしまった……」
「それは私があなたを置いて一人で逃げたから……」
「いや……私が君の側を離れなければ別れずに済んだのだ……。もっと早く君に気付いて、君の元へ……」
ヴィンセントは言葉をやめ、抱き締める力を強くする。
痛いほどの抱擁が彼の存在を伝えて心地よささえ感じさせた。