第9章 瞳の住人
ナナキとクラウドがブーゲンハーゲンの家につく。
「じっちゃん!」
「おお、よく来たの」
シャロンが少し遅れて中へ入る。
「おじいちゃん、お久しぶりです」
「そなた、無事じゃったか。よく戻ってきたのう」
シャロンが泣きそうな顔を浮かべて頷く。
「そなたの星は災難が多い……案じておったのじゃ」
「勝手に出て行ったりして、ごめんなさい……」
「ホーホーホウ。何か理由があったのじゃろう。無事でいるならそれでよい」
「ありがとうございます……」
「ナナキ達と共に行動しておったのか。ということは……」
ゴツ、と固いものが扉に当たる音がして振り返ると部屋の扉が開けられ、ヴィンセントが赤いマントをはためかせる。
「失礼する……」
ヴィンセントの姿を見て、ブーゲンハーゲンはシャロンに笑ってみせる。
「会えたようじゃの」
「はい」
事態を把握できない様子でヴィンセントが皆の顔を順番に見るが、誰も説明するつもりはないらしかった。
「それで、今日はどうしたのじゃ? わしの知識が欲しいときはいつでも大歓迎じゃ」
「ああ、今日はそれで来たんだ」
クラウドを中心に、今後の行動についての相談を始める。
行き先に迷った彼らにブーゲンハーゲンは、己を見つめなおし、見落としているものを思い出せという。
しかしクラウドもレッドⅩⅢもヴィンセントも、考え込んでしまい、時だけが過ぎていく。シャロンはなおさらメンバーに加わってさほど経っていないので、どんなに考えても埒があかない。
「……ねぇ、みんなも呼んだほうがいいんじゃないかしら。知識は多い方がいいでしょう?」
シャロンの提案にクラウドも頷き、メンバーを呼び出した。
そして見落としている何かについて全員で思い出してみる。
「……あかん、全然わかりまへんわ」
「あたしも、全然ダメ!」
ケット・シーとユフィがギブアップ宣言をする中、クラウドはまだ少し考えていた。そして神妙に口を開く。
「俺は……エアリスのことを考えていた」
エアリスといえば、シャロンの加入前にセフィロスによって命を奪われたという女性だ。シャロンはエアリスに関心していた。死してなお、仲間の心に残り続けるその存在を。残された誰かを守るために、最後の瞬間まで命を燃やした女性を。