第17章 episode Ⅳ 新田 光
「光、最近はちゃんと学校行ってるの?」
飯食って、りょーちんと2人きりになった時、突然そんなことを聞かれた。
「え?…や、あんまし」
「そっかあ」と言うだけで、また包丁で食材を切る音が響く。
「…何?」
「え?何が?」
「心配、とか言いたいの?」
その言葉に「はは」と笑うりょーちん。
「まあね、最近光に対して
兄貴心が芽生えてきたというかあー
家族の域に達してきたというかあー」
そうやってまたフザけた後、優しい視線を俺に向けた。
「…まあ、冗談抜きにして。
心配してる人もいるんじゃないかな、って。
こんな事言われても、ほっとけよ、って
思われるかもしれないけど、
…俺が、そうだったから」
" ほっとけよ "
俺が母親に言った言葉。そう言えばだいぶ顔を合わせていない。あんなに頻繁にあった連絡も無くなった。
何も言わない俺に
「俺、母親早くに亡くしてさ、
それから気付くことがあまりにも多すぎて
後悔しまくったから。
それってもう取り返しつかなくて
埋められないまま生きていくわけだから
やっぱり辛いよ」
「なあんて、おっさんの説教ほど喰えないものはないよな」と笑う。
" 後悔 "
人生の先なんて考えたこともなかった。
自分も勿論、母親も、洸も、
いつまでもこれが続くわけじゃないって
そんなこと、
たった14のガキに想像できるわけなかった。