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プロポーズされてみませんか? 【短編集】

第17章 キライ、でも、スキ 【黄瀬涼太】


「最低っ!! 」

「そっちこそ最低ッス!!」

「なんで私が最低なの!? 意味わかんない!!」

「意味わからないとか馬鹿なんスね!!」

「うるさいっ!! もうあんたなんかキライ!!」

「俺の方こそキライっす!!」

まさに売り言葉に買い言葉。
ばたんと大きな音を立ててしまったドアの向こうに彼女は姿を消した。
こんな子供みたいな喧嘩、いつもと変わらない。本当に些細な、馬鹿みたいな事で喧嘩をしてしまう。
そして今みたいに最終的に彼女が自室に篭ってしまうのだ。

「はぁ……」

俺は溜息をついてソファに少々乱暴に座る。
俺、黄瀬涼太と彼女の春乃は付き合ってからもう5年になる。

高校最後の年。
高校の文化祭で出会った春乃はモデルになりたての新人だった。
俺のクラスがしていたカフェに来た春乃が俺のことを指さして「あ!シャラ男!」と大声で言ってきたのが話すきっかけになった。
いや、幾ら何でも初対面の人間にそんな発言するか?と思った俺は思わず爆笑してしまった。しかもなんでチャラ男ではなくシャラ男?。

そんな出会いから数ヶ月。
今度は撮影現場で春乃と再開を果たした。文化祭での1件から再開するまでの期間で春乃の知名度は一躍。雑誌の表紙を飾るトップモデルへと進化していた。
もともと顔面偏差値が高く、それに加えて飾らない性格が読者の心を掴み、俺たちと肩を並べるぐらいまで登りつめた。
その撮影現場で連絡先を交換し、そして何回会って互いに恋に落ちた。

そして現在。
春乃はモデルだけでなく、歌手としての活動をしており、人気も高い。
先ほどの様な喧嘩はするがそれでも仲睦まじく5年も月日が経った。

今回の喧嘩の原因は俺にある。
机に広げられた週刊誌。そこには、【黄瀬涼太、新人モデル○○と密会デートか】と書かれている。そう。これが喧嘩の原因。もちろんこの週刊誌に書かれているのは根も葉もない事ばかりだ。それを春乃にきちんと説明しようとしたが聞く耳を持ってくれず、その事にムカついてこちらも喧嘩腰になってしまった。
そして最終的に彼女が部屋に篭ってしまったというわけで。
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