第3章 一つ合宿所の屋根の下
「瀬戸ちゃん大丈夫?」
「あっ、す、すみませんっ、大丈夫です……」
あまりの衝撃的な発言に手元が狂い、テーブルのコップを倒してしまった。東峰先輩が慌てて声を掛けてくれるが、覚束無い返事しか出来なかった。
倒してしまったコップを定位置へと戻すと、逸る気持ちを抑えて影山さんの元へ向かう。
「か、影山さんっ!」
「瀬戸。おはよう」
「おー!瀬戸はよーす!」
「起きてからもう瀬戸がいる…!」
「おい二人とも。顔のニヤけを何とかしろ」
主将朝からツッコミお疲れ様です。主将のツッコミに内心で敬礼をすると、すぐさま影山さんに向き直る。
「あの、さっきの、足音の話なんですけど…」
「ん、あ、ああ。その話がど、」
「もーさー!そんなの寝惚けてたか夢だよなー?なのに影山すっげビビってんだよー!」
「可愛いとこあるのな影山ぁ~」
田中先輩は影山さんの肩を一方的に組み、影山さんの言葉が遮られる。その代わりに田中先輩と西谷先輩のからかいが綴られる。ホント二人は影山さんからかうの大好きだな。
「で、どうしたんだ瀬戸」
「あ、は、はい。あの…その音聞いたの、何時頃とかって、覚えてますか…?」
「え、と…確か、11時丁度くらいだったと思うぞ。それがどうかしたのか?」
“11時丁度くらい”。私があの時時計を見た時も11時。
「お、おい…瀬戸。まさか…」
主将が青い顔で言葉を漏らした。私は静かに影山さんに質問を投げかける。