第9章 イリーナ・イエラビッチ
「あぁ~…今日から来た外国語の臨時講師の先生を紹介する」
「イリーナ・イエラビッチと申します♡みなさん、よろしく♡」
そう言って自己紹介をしたのは今朝のナンパされていた女性だった。
そしてなぜか殺せんせーにくっついている。
(あの先生、E組担当の先生だったの?!)
てっきり優秀な生徒が集まるA組を担当するんだと思っていた。
「あの先生、E組の先生だったんだね(ボソッ」
赤羽くんも同じことを考えていたようで私に小声で言ってきた。
男子たちの目は完全にあの美貌に釘付けだ。
でも女子たちはなぜかイリーナ先生が殺せんせーにベッタリなのかと多少怒っている。
「本格的な外国語に触れさせたいとの学校の意向だ。英語の半分は彼女の受け持ちで文句ないな?」
「仕方ありませんねぇ」
殺せんせーは烏間先生の話をしぶしぶ了解した。
「なんかすごい先生来たねぇ…しかも殺せんせーにすごく好意あるっぽいし…」
「うぅん…でもこれは暗殺のヒントになるかもよ」
「タコ型生物の殺せんせーが人間の女の人にベタベタされても戸惑うだけだ。いつも独特な顔色を見せる殺せんせーが戸惑うときは…どんな顔だ…?」
渚くんは冷静に今の状況を暗殺に生かそうとしている。
(さぁ…どんな顔だ…?)
みんなに緊張が走る。
「にゅるふぅん♡」
殺せんせーは顔色をピンクに染め、いつもよりニヤけ度を増した。
「いや普通にデレデレじゃねぇか」
「何のひねりもない顔だね…汗」
「うん…人間もアリなんだ…」
そして殺せんせーの弱点に『おっぱい』が追加された。
「はぁ…♡見れば見るほど素敵ですわぁ…」
イリーナ先生はうっとりした顔で殺せんせーを見上げた。
「その正露丸みたいなつぶらな瞳…曖昧な関節…私、虜になってしまいそう…♡」
「ヌフフ…いやぁお恥ずかしい…♡」
イリーナ先生の言葉にデレデレしている殺せんせーは見ていてイライラした。
((騙されないで!殺せんせー!そこがツボな女なんていないから…!))
全員がそう思った。
普通に考えればこの学校が『E組なんか』にわざわざ講師の先生なんて雇う訳がない。
そう、この先生は別の目的でこの教室にいる。