第8章 死んじゃったら悲しむ人がいる
私はカエデと別れ、家へと足を進めた。
少しボーっとしながら夜の暗い路地を歩いて行く。
(赤羽くん…なんであんなことしたんだろう…)
ふとあの光景がよみがえる。
「っっっ!!!////」
思い出すと恥ずかしくて思わず足をとめ、考えをかき消すように頭をぶんぶんと振る。
(で、でも…もし、もしも…赤羽くんが私と同じ気持ちだったら…)
さらに顔がボッと熱くなる。
(な、何考えてんの私!!そんなこと!あるわけ…)
だがそうでなかったらあの行動の説明は?
何故あんな行動をした?
思考回路がうるさく質問を投げかけてくる。
(んもぉ…頭おかしくなりそう…)
だんだんイライラしてきて足元の石を強めに蹴る。
――コン
すると何かにぶつかった音がした。
ハッとして前を向く。
靴にはねたような音がした。
「ご、ごめんなさ…!」
目の前を見ると、
そこには『赤羽業』が立っていた。
「っえ…?」
赤羽くんも驚いているようで目を見開いている。
「の、ののちゃん…?」
そぉっと確かめるように私の顔を覗き込むようにしてこちらに問いかけてくる。
声を出そうにもなかなか出せず、ゆっくりと頷く。
すると赤羽くんは顔を真っ赤にして、腕で顔を隠した。
私はゆっくりと視線を合わせるように赤羽くんの顔を見た。
そしてよみがえる放課後の記憶。
さっきまで考えていたこと。
頭がおかしくなるほど考えた。
だが考えても分からなかった。
でもそれらの答えは目の前にある。
そう思うと、私の目から『涙』がこぼれた。
なぜ?
そんなの分かる訳ない。
だが、なぜか涙が止まらない。
「えっ?!」
赤羽くんはさすがにとても驚いているようで私の方へと駆け寄りあたふたとしている。
「の、ののちゃん?!ど、どうしたの?!」
「ひっ…うっ…っわかんっない…」
頑張って涙を止めようとしてもなかなか止まってくれない。
「…俺のせいかな…」
赤羽くんは悲しそうな声を出す。
「俺が…俺がののちゃんのファーストキス奪っちゃったからかな…ゴメンね…」
「もう2度と、ののちゃんに近づかないよ…」