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悪夢恋愛歌

第1章 悪夢は突然に


月明かりが一人の少女を照らす。
彼女は寝ているようで、静けさの中に小さな呼吸が混ざる。
ここは教会であり、少女の他には誰もいなかった。
ただ一つだけ灯りのある蝋燭を除いては。
雷雨「マリア様...」
その声は外から漏れる風にかきけされた。
?「マリア?んなもん、ここにはいないぜ。お嬢ちゃん。」
少女が目を覚ますとそこは教会ではなく、どこかの廃屋だった。
所々に血痕とひびがあり、今にも崩れそうだ。
雷雨「あなたは?」
扉の前に立つ不気味な男。
クリスマスカラーのセーターに焼けただれた皮膚、右手には鉤爪。
ホラー映画によく出る殺人鬼のような姿だった。
?「俺か?俺はフレディ。神を信じない男だ。」
ニンマリと口角を上げ、男は答えた。
雷雨「神はどなたにも幸福を授けて下さります」
物怖じもせずに話す少女に男は眉間にシワを寄せる。
そして、歪む世界と共に姿を消した。
少女が夢だと気づいた時には世界は一変。
どこかの湖の畔に立っていた。
霧が周りを包み、視界は悪い。
鳥の鳴き声と水の音だけが響き、風は生ぬるい。
フレディ「神は幸福をお前にも授けたか?俺にはそうは思えないんだが?」
どこからか聞こえるその声に少女は辺りを見回す。
雷雨「あなたに何が分かると言うんです?」
フレディ「俺には分かる。お前の苦しみが。悲しみが。神は平等ではない。思い出せ、あの頃を。」
突然湖全体に光が灯った。
水面に映ったのは彼女の幼少期の姿。
驚いたのも束の間、湖の底へ彼女は吸い込まれた。
雷雨「ぐっ、んん。」
肺の中の酸素はすぐに尽き、意識が遠退く。
?「お前は悪魔の子だ。」
飛び起きると少女は自分がずぶ濡れだということに気づいた。
雷雨「はぁはぁ、どういうこと!?」
ただの夢だと思っていたことが現実になっている。
雷雨「フレディ...思い出せって?何を?」
最後に聞いた声と共に頭痛がはしる。
彼女は頭を抱え、教会を後にした。
残された蝋燭の火はマリア像を照らし、独りでに消えた。

『母よ、と強く、強くお呼びしなさい。聖母マリアはあなたに耳を傾け、ひょっとしたら危険のさなかにいるあなたをご覧になって、御子の恩寵とともに、ご自分の膝に乗せ、優しく愛撫してくださる。そこであなたは新たな戦いに赴くための勇気を得たことに気づくだろう。』 
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