第1章 卒業式の答辞
「私は…第1志望の高校に合格する事が出来ませんでした。
だから、後輩の皆さんにどうしても伝えたいことがあります。
これから、みんなの人生にも思いがけないことが起こるかもしれません。
でも、みんなの人生は、まだ、始まったばかりです。
だから、失敗しても、簡単に諦めないで。
心を強くする訓練をして、志を大きくもってくださいね。
最後に、
『試練を乗り越えないと人は成長しない。』
この言葉をみなさんに、送ります。」
「わぁ~!」
歓声があがり、いっぱいの拍手が私の全身を包みこんだ。
泣かないつもりだったのに…涙が…沢山の涙が溢れてくる。
泣くことがあっても、死にたいほど辛いことがあっても、人はちゃんと笑える日がやって来る。
卒業式が終わるとホッとした。
全校生徒の前で、父兄の前で、受験に落ちたって、はっきり言っちゃったんだもん。
もう怖いものなんてないよね。
身軽になった体がまるで他人の物のように思える。
「蘭、答辞…ものすごく良かったよぉー。」
同じクラスの明依が泣きそうな顔になっている。
「ありがとー。」
「私、蘭に会えて本当に良かった。」
「私だって、明依に会えて、良かったよ。」
「離れても親友でいようね。」