第7章 偽りもの
12月24日。今日は『aspiration』でのクリスマスパーティーがある。ふたりのわだかまりとなったこの件についてはその後どちらとも触れようとせず、なんとなく地に足がつかない生活を送っていた。
(んー…自然に振る舞えてるはずなんだけど。)
会話は交わすし、ふたりで買い出しも食事もする。けれど、どこか互いが互いを腫れ物に触るかのように扱うため違和感を感じずにはいられない。
(まぁ…せっかくのクリスマスだ。楽しまなきゃね。)
『いってきます。』
いつもより少しだけ身支度に時間をかけ、家を出た。
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「えーと、皆様!飲み物の準備はよろしいですか!!」
時刻は午後9時。隼斗くんの声に皆グラスを持ち上げる。
「それではっ、メリークリスマス!!』
___メリークリスマス!!!
彼の音頭と共にグラスを合わせる音があちこちからする。私も周りの従業員らとグラスを合わせる。
スタッフルームの長いテーブルの上にはオードブルやピザなど、いかにもな料理がいくつも並んでいた。
「おいっ絵夢!乾杯!」
『はい、メリークリスマスです。』
先ほど音頭をとっていた彼と、すでに数回交わした行為を同じように交わす。
「っはあー!やっぱ仕事終わりの酒は最高だよな!」
お酒は嫌いではない。しかし、そこまで強くない私はここで潰れたらいけないと、ソフトドリンクを注いでもらった。それに、お酒の匂いがついたまま『彼』のいる家には帰りたくない。
同僚の人たちとの会話を楽しむ間も、なんとなく『彼』のことが気になってソワソワしてしまった。
周りの話が頭に入ってこなくなったところで、私は人だかりから少し離れた椅子へと腰を下ろした。
「お前なんでそんなの飲んでんだよっ?今日この場は無礼講だぞ!」
先ほどまで人の輪の中心にいたはずの隼斗くんが、いつの間にか目の前にいた。
酔っているのかシラフなのかわからない彼が私のグラスを取り上げる。様子からして、ほろ酔い状態だとうかがえる。