第4章 働きもの
__________ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピ…
『ん………』
(何の音…?)
聞きなれない音に目を覚ました私は周りを見渡した。いつもより少しだけ早い起床だ。しかし、周りに音の正体となるものは見当たらず私は部屋の扉へと目を向けた。
(音…リビングからする…?)
自分の耳を頼りに、その扉を開けた。すると、ソファの上、正確には椎の腕の中にソレは隠れていた。
『これ、目覚まし時計…』
それは、この間のショッピングで唯一彼が欲しいと言ったものだ。しかし、なぜこんなものを抱いて寝ているのだろうか。
いろいろと疑問に思いながらも、彼を起こさないようなるべく物音を立てずにそれを止めた。
(これで起きないとは…相当疲れてるのかな。)
昨日は仕事はなかったものの、私はやりたいことがあると彼に告げ、ずっと部屋にこもっていた。
彼が何をしていたかは知らないが、時折、物音がしたため何かしらはしていたのだろう。
『……あれ?なんか部屋、きれいになってる?』
そこで部屋を見渡して、初めて家中の汚れが見当たらないことに気づいた。おそらく彼が昨日していたことはこれだろう。
部屋の掃除など、月に一回するかしないかくらいの私にとっては大変ありがたいことである。
1LDKとはいえ、それなりの広さがあるこの家を一日でここまできれいに掃除するのは大変だと思う。私は軽く彼の髪を梳いて、
『ありがとう。』
とだけ言って、コーヒーメーカーのスイッチを入れた。
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その後、コーヒーに牛乳を入れ、ぬるめのカフェオレだけ飲んで少し早めに家を出た。もともと朝はあまり食べないためコンビニで適当に買って朝食を済ませた。
料理ができないわけではないが、最近は作るのが面倒で出来合いのものを食べることが多かった。そのため、椎の手料理はかなり楽しみだったりする。
(椎…起きたかな…?)
無意識にそんなことを考えながら、仕事場へと向かった。