第3章 お買いもの
彼との同居生活がスタートしたのはいいが、この家には彼の物がひとつもない。買ってもらうなど忍びないと言われても、服や下着などは最低限必要な物だ。
さすがに毎日同じ服を着せるわけにはいかないし、もちろん私の服で彼が着れそうなものなどあるはずがない。
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ということで、遠慮という名の抵抗を繰り出す椎を無理矢理家から連れ出した。
「俺は別に毎日同じ服でも構わないのに…わざわざ買ってもらうなんて…そんなの家事の対価じゃない…」
『そんな暗いこと言わないでよ…せっかく私の久々のお出かけなのに。』
そう、彼には私のショッピングの付き添いという名目でついてきてもらっているのだが、私の企みはすでにばれている。
『とりあえず駅向かうからちゃんとついてきてね。駅前にだいたい主要なお店がそろってるから。』
「ん……」
(…これは拗ねてるのか?)
唇を尖らせ、そっぽを向いて歩く彼は明らかに拗ねている。背丈は大きくてもやはりまだどこか大人になりきれていない感じの彼に私の頬はつい緩んでしまう。
「………何?ジロジロ見て…」
『椎、拗ねてるでしょ?』
「……………拗ねてないもん。」
だんだん椎との会話に慣れてくると彼を構うのが楽しくなってきた。いちいち素直な反応をしてくれる椎をついからかいたくなってしまう。
年下の兄弟に憧れていた私にとっては、本当に弟ができたようでとても楽しい。