第6章 空虚感(刹那)
「それならば、俺を避けたのも納得できる」
「本当は、誰かと一緒に居たかったのに、あたしがそれを許せなかったってか?」
「あぁ」
「…………」
そういえば、どこかで思った。
あたしは、一人でも大丈夫だと。
だが、それが逆に、「あたしは一人じゃなきゃいけない」という考えに至ったって事か?
それに、誰かと「一緒にいたい」って思う自分がいたのなら、あたしは多分、それを認めねー。
誰かがいないと生きていけないとか、あたしが弱ぇみてーだ。
あたしは強い。
だから、一人で大丈夫だし、一人でいなきゃいけねーんだ。
あぁ、悲しいくらい刹那の言う通りだ。
だが、あたしのプライドの所為で、「そうだな」と返せる意思をあたしは持ち合わせていなかった。
「俺は」
静寂の中、刹那が口を開く。
「誰かと共にいたいという思いは、エゴでもなければ恥ずかしい事でもない。むしろ、誰かと共にいるから、人は強くなれると思う。名前達とミッションをこなしている中で、俺はそう学んだ」
「刹那……」
「それに」
刹那は、何かを決意したように、あたしに向き直った。
「俺は、名前と一緒にいたい」
俺では、駄目か?
あたしの隣で、そう刹那は言った。
一人でいるのは嫌いじゃない。
むしろ楽だ。
だけど、一人の時にまれに現れるこの空虚感。
それはただ、人恋しかっただけ。
家族愛。
兄弟愛。
友愛。
恋愛。
どれか一つでもあれば、自分を満たせていたのに。
それを求める自分を、許せていなかった。
正体の分からない空虚感は
ただただ、愛が足りないだけでした。
END