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シンデレラと白雪姫

第4章 Desire


「あなたを守る為に…陛下を亡き者にした。罪なきものを罪人にした。私がリンゴを跳ね飛ばしていなかったら王子は間違いなく実の母に手をかけられた哀れな人になっていたでしょうね。」
大臣は顔色ひとつ変えない。
所詮は小娘の推論にすぎない。証拠が何もないのだから。
「そんなつまらないことを仰る為に今夜のパーティーに忍び込むとはとんだ小娘だ。白雪姫は牢へ入れろ。今度こそその息の根を止めてやる。」

城の時間がリセットされる。
言わずと知れた鐘の音である。
12回鳴り続ける。


「さあ、今日は大掃除の日ね。王子、未来の王妃の選別はまた今度よ。」

突然慌ただしい足音が近づいてくる。一人ではない。複数である。
「おっと」
「ところがどっこい」
「そうは問屋が卸さない」
「大臣閣下は出張に」
「王妃様は里帰り」
「その分時効は繰下げに」
「防げ冤罪、償え殺人罪」

小人たちの後ろから登場したのは京都国の警察官3名。
「第165代国王殺害の疑いで任意同行を求む!」
とは言いつつもうずるずると抵抗する二人を振り回して去っていった。
「カツ丼は自腹でお願いしますよ」
「それなら海老天丼にするわ」
というやりとりがあったとかなかったとか。

シンデレラは無意識のうちに1人の警官の袖を掴んでいた。
「う…疑いが晴れたら父さんは釈放してもらえるんですよね?」
頭に暖かい手が乗る。そして毛先を弄ばれる。ドキドキが止まらない。
「ああ、そうさ。大掃除の対象から外れる。」
あの、と白雪姫が横から顔を出す。
「この子とお父さん、会わせてもらうこと出来ますか?」
警官は暫く考え込んだ後、電話をかけ始めた。
「1日だけ待ってくれ。すまない…」
謝らないでください、と下げられた顔を追いかけるようにしてしゃがむ。目が合ったその時、えもいわれぬ幸福感が駆け巡る。不思議と口許が緩む。どこかフワフワしているようにも感じる。
相手の口許もふわりと緩み、綺麗な三日月が出来た。
「シンデレラか…ガラスの靴と王子様はどうした?」
シンデレラは混乱していた。いたって普通の素材の靴でガラス製ではない。そして直感が告げている。フィリップ王子は誰か別の王子様になる人で自分の王子様は…
この世界のシンデレラの王子様は、と言葉を繋ぎ、その瞳を一心に見つめる。
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