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暴君と花嫁

第1章 私は、武田奏依です。


「はぁっ、はぁっ……っ、ここまで、来れば、平気……」

駆け出してからどの位なのだろうか。

一心不乱に逃げていたから時をも忘れてしまった。


ここで、終わってしまうのだろうか……
ううん!駄目!たった今現在、佐助や幸村は戦っているのよ。私が諦めてしまったら今までのが皆無になってしまう。


「ん、もう逃げねぇんだなぁ?お姫さん?」

「っっ!!?な…んで……!」


な、なんで、政宗公が……!?


「なんでって、そら追いかけたからだろ?」

「で、でも、佐助は……」

「あぁ、小十郎に任せてきたぜ?」


小十郎……はっ!
……甘かった。
この方の一番の家臣、片倉小十郎がいることを忘れていた。


「さてと、痛いこたァしねぇ。こっちに来い。」

「拒否させていただきます。」

「幸村が死んでもいいのか?」

「っ!!」

「お前を人質に取ったって聞いたら迷わずこっちに来るだろう。大切な姫も守れねぇやつなんか旦那に相応しくねぇだろ。お前の前で切腹してもらうぜ。いいのか?」


卑怯だ。
私がその言葉に弱いのを知って言っている。
要は、私に拒否権は無い、と言うこと。

私は仕方無しに政宗の傍へ行く。

一歩一歩を踏みしめるように、ゆっくりと。


「最初からそうしとけば良かったんだよ。
全く、世話かけさせやがって。
…まぁいい、お前、俺の妃になれ。」
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