第1章 プロローグ
誰も居ない暗がりの部屋。
彼女は色褪せた写真をただ、見つめていた。
『...どこに....なんで..っ』
彼女はただ一人、静かに涙を流した。
写真には、一人の幼い少女に抱かれた黒猫。
彼女は、写真の淵をなぞると、そのままそっと瞳を閉じた。
『....~~たなびく雲のその向こうに♪』
そっと開けた唇から紡がれる音は、
とても悲しく、気高く、美しく、、どこまでも澄んでいた。
しかし、少女はぐ、っと唇を閉じて、紡ぐことを止めてしまう。
彼女はどこか虚ろな瞳をして、そのまま部屋を後にした。
テーブルの上には、“早乙女学園転校について”という、通知書が置いてあった。
日付は、4月12日。今日だった。