第4章 唯一の国
「お帰り、僕の婚約者。」
杲良は、ニヤリと怪しげな笑みを浮かばせながら、柚姫を見る。柚姫は、全身に鳥肌を立たせながら睨み付けるように、杲良を見ていた。
杲良の格好は、やはり貴族が着そうな服装だ。服には、高価な石などの組み合わせでめったにない布などを使った服を着ていた。
「婚約者ー!?マジで!?」
一番最初に声をあげたのは、高尾だった。誰もが驚くのは当たり前の話。しかし、黒子達は、この人が叔父だとは知らない為、そんな風に騒ぐのだ。
柚姫は、冷たい瞳で更に先程に比べられないような低いトーンで杲良に向かって話す。
「止めて下さい。私は貴方様の婚約者でもない…叔父と姪の関係です。」
「はぁ?叔父と姪の関係だー?」
青峰は、面倒くさそうな表情を浮かべながら柚姫が言った言葉を繰り返して言う。
「つまりは、叔父が勝手に自分の婚約者だと言っているだけか…。」
笠松がそんな風に説明をいれるが、柚姫との距離がかなり離れている。やはり、笠松は女性が主に苦手だと此処で証明される。
杲良は、ニヤニヤと笑いながら一歩一歩と柚姫に近付いていくが、柚姫は目を細めて冷徹な言葉を発する。
「私の半径1m以内に、入ってきたら斬ります。それも、問答無用です。いい加減にしてもらえませんか?」
柚姫の瞳には、殺意が芽生えている。杲良は、ピタッと足を止めるが注目する場所が違っていた。
「その怪我は、一体なんだ?」
杲良が言った怪我というのは、黄瀬を庇った時に怪我をした場所だ。