第3章 シリーズⅢプリティーレッドゴールド①
「ここが、桜蘭高校ねぇ。おもしろそうじゃん。待ってろよ……須王環」
榎本アサヒ、16歳。
自分の婚約者をこの目でしっかり見るため、本日転入しに参りました。
須王環とあたしが婚約関係にあるということは、まだあたしと榎本財閥総帥である父と、須王財閥の総帥しか知らない。
好きな人もいなかったし、好きな人と幸せな結婚をするなんて夢見がちな少女でもなかったからすぐに反対はしなかったけど、やっぱり勝手に決めた親達に少し腹が立っていた。
だから、須王環がどんな人間なのかこの目で確かめ、もし気に入らない人間だったら婚約はしないと総帥に宣言した。
七名家と謳われる名家の二つ、榎本財閥と須王財閥はどちらかといえば須王財閥の方が上だけど、総帥と初めて会った時すごく気に入られて、本当に無理なら無理強いはしないと言ってくれたから、そこは安心している。
そういうことで、女の格好だと本性を出さない奴もいるから、現在あたしは男装している。
聳え立つ校舎を見上げ、あたしは一歩踏み出した。