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好きになる人は

第1章 好きになる人は


「好きなの!」
「ブフゥッ!」
「うわ!?……もう、シロ!汚い!!」
「お前のせいだろ!」
「えぇー……」
 何でシロがお茶吹いた理由が、私のせいになるんですかー?私、単に話してただけじゃない!
 まるで文句みたいな正論をブチブチいいながら、シロを見る。シロはお茶で若干噎せながら、机の上に広がった水溜りならぬお茶溜まりを、拭き取っていた。よかったね、書類濡れなくて。
「いきなり“好き”とか言うなよ!」
「だって好きなんだもん」
「ほう……。じゃあ、そいつの名前言ってみろ」
「え?なんで?」
「決まってんだろ!ソイツを……潰す!!」
 「こんな感じでな」と言わんばかりに、持っていた雑巾をギュッと握りしめるシロを見て、思わず笑みが漏れる。その笑みは次第にちゃんとした笑い声へと変わった。
 ムムッと眉間に皺を寄せ、シロは怪訝そうに「何笑ってんだよ!」と怒鳴る。そりゃぁ、笑うよ。だって、私の好きな人は、
「シロだもの」
「はぁ!?」
「だーかーらー。私の好きな人、シロだよって」
「なっ!……何言ってんだよ!俺、お前の弟で、」
「うん、だから家族愛。あんまり“好き”とか言わないから、たまには言おうかと。……あ、もしかして勘違いした?」
 私に好きな人ができたって。意地悪く笑ってみせれば、シロは怒りと恥ずかしさでか、顔が徐々に赤くなった。
 あ、これはヤバイかも。長年の勘で感じ取って、慌ててシロに謝ってみる。でも、シロは「知るか!」の一点張りで……。
 ほんの少しだけ胸が申し訳ない気持ちになると同時に、シロがボソリと呟いた。
「俺も、ちゃんと好きだから」
「っ!?……い、今、なんて?」
「聞こえてんだろ!馬鹿!!」
 今度は照れで顔を真っ赤にしたシロに、私は嬉しさの余り笑みが零れた。
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