第31章 He want not to stay,
「……」
「……」
「そんな目で見ないでください!!」
ロヴィーノの「コイツ……やべぇ」と言いたげな瞳に心を挫かれながら、私は立ち上がった。
ドアノブをカチャカチャ捻る、が、当然のごとく開かない。
ロヴィーノと私はタイミングを合わせ、扉に体当たりした。
すると、
「……あら?」
拍子抜けするほど簡単に、扉が壁から吹き飛んだ。
年季の入った板の扉を押し倒したような感触だった。
「っし。……お? 狭いが足元に常夜灯がついてんな」
ロヴィーノの声を聞きつつ、外れた扉を観察する。
鉄製、ごく普通の厚み、錆びはあるが、機能に問題はなさそうだ。
……おかしい。
思考が疑念に入りこむ前に、手があたたかな温度をまとった。
「離れるなよ」
それは、ロヴィーノの手だった。
どこか懐かしいようなその体温を、一度は失いかけた感覚を、確かめるように握り返す。
――親分やったよ、あとはもう、帰るだけだよ
私たちは牢屋をあとに、常夜灯が鈍く照らす通路を走りだした。