第31章 He want not to stay,
目が覚めたとき、そこにいたのは意外な人物だった。
「……ロヴィーノはどこ」
「第一声がそれかよ」
彼は鼻で笑うと、答えるつもりはさらさらない、とでも言うように口元を歪めた。
――――
私がいたのは、小さな部屋だった。
床は石畳、といえば聞こえは良いが、コンクリートがむき出しで、家具はひとつもない。
あるのは、私が拘束されている椅子。
格子つきの窓。
それだけだ。
牢屋――まさにそんな名がふさわしかった。
窓とは言っても、差しこむ光はわずかで、薄暗いことこの上ない。
さらにその光は曇り空から、ときている。
彼の顔――アーサー・カークランドの顔も、普段より一層不機嫌そうに見えた。
「……えっと……」
情報が同時多発的事故を起こし、思考回路にひどい渋滞をもたらしている。
世界会議のときとは、立場も、雰囲気も、まったく正反対だ。
やっぱ縛られるより縛られてるのを見る方がおもしろい――じゃなくて。
しげしげと、目の前の男を観察する。
寝起きと言われても納得する金髪、高慢そうなペリドットの瞳、主張の激しい眉毛――
一目で、かの大眉毛ランドさんだとわかった。
「……誰?」
けれど、ほとんど無意識に、そんな問いが口から転がりでた。