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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第29章 for dear my imaginary blank


そう言って、アントーニョに向き直る。

息を止めたような動作ののち、アントーニョの手をとった。

彼の肩がびくっと跳ねる。

「――絶対、連れて帰ってくるから」

手を握りしめ、フェリちゃんは力強く微笑んだ。

そしてパッと離し、今度は私とアーサーの手をとる。

「じゃみんな、行ってくるね!」

「おいっ、ばか離せ!」

そのまま手を振るものだから、私たち三人は万歳しているような格好だ。

それがおかしくて、彼の手のひらから伝わる温度が暖かくて。

――うん、絶対に。連れて帰ってくる

きっとロヴィーノは、ひょっこり現れて「……迷ったりしてねーぞちくしょー」なんて言うんだろう。

それから戻って、フェリちゃんにパスタを披露するのだ。

異変はひととき忘れて、みんなで騒いで――

「覚悟は決めたか?」

消失点を使う覚悟か?

ゴーストタウンへ行く覚悟か?

それとも――

「もちろんです」

アーサーの声、瞬間、水面から光が湧きあがる。

足が浮く、落下、迫る水面。

誰かの笑い声が川の音に紛れる。

水飛沫のかわりに、何度目かの揺らぎが意識を奪った。
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