第13章 SPECIAL STORY
*
季節は12月。
日が落ちるスピードも随分と早くなって。
「さ~むい~」
「相変わらずこんなにスカート短くするからでしょうが」
「長いの可愛くないんだもん」
それでも私と先生は相変わらず、化学準備室で煙草をふかしていて。
「あれからもう三か月かあ。」
先生が隣に座る私の顔をまじまじ見つめながら言う。
「もうそんな経つんですねえ」
「とんでもない金髪の金持ちがいたり、まっすぐすぎる赤髪のキューピットがいたり」
「ほんと、いろいろあったなあ」
へへ、と苦笑いをすると、先生はちょっと驚いて笑った。
「アキラには、本当に感謝しなくちゃだけど、」
「だけど?」
「やっと、ちゃんと笑うあいつが見れてほっとしてる。」
生徒に迷惑掛ける教師とかなさけねえ~、と笑う。
確かに、アキラはやっと、本当に太陽みたいに笑うようになった。
心なしかアキラに色目を使う女の子も増えたような…。
「かっこよく、なったもんなあ」
「…」
「なに、先生?」
「いや、妬けるなあって。」
ぷう、と頬を膨らましてそんなことを言うものだから、私は小さく笑った。
ほんの少し照れくさくて、煙草の火を消しながら、つぶやいた。
「私が一番好きなのは、先生だよ。」
先生は、ちょっと驚いた顔をした後、煙草の火を消した。
「卒業してからだ、って思ってたのに~」
「ん?なにが…ってええ…ちょ、せんせ」
ゆるゆるとそのまま、ソファに押し倒される。
「」
少しでも動けば、唇が触れ合いそうな距離。
「せ、んせ」
「ケント、がいい。」
「ケント…さっ…ふ…」
名前を呼び終わるや否や、先生の薄い唇が、私の唇に重なった。
触れるだけのキスを、何秒間…先生は名残惜しそうに私から離れ、そのまま私を抱きしめた。
「…さん。可愛すぎる、ギルティ―です。」
「…ふふっ、なんですかそれ。」
(ある種、気持ちは深海のなかに入れとかなきゃですね。)
深海のリトルクライ
SPECIAL STORY【完】
→あとがき