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深海のリトルクライ(アルスマグナ/九瓏ケント)

第8章 闇夜に溶かして




今日も2人でちょっとしたご飯を食べた後、夏休み開放中の学校の図書館で勉強をしていた。
んだけど。

「…、顔色悪いけど、ヘーキ?」
「え?あー、ちょっと眠れなくて。」
「…今日は辞めとこうぜ、勉強。」
「こらこら、宿題したくないからって…」
「ちげーの、お前、ほんっとーに顔色悪い。」

夏場とは思えない程に青ざめたを支えるように立ち上がり、図書館を出て、男子寮と女子寮の丁度目の前に来た時、は倒れた。

寮長に許可を取って、自室にを通す。
保健婦さんにも診てもらったけれど、睡眠不足と貧血との事だった。
「暫く寝かせたら落ち着く」らしい、

もちろん頭ではただの貧血だってわかっていたつもりだけど、それでも1時間程でゆっくり目を開けたに、心底ほっとした。

「…ごめん、」
「ごめんじゃねーの、いいから、ゆっくりしとけ」
「…あんまり、眠れて、なくて。」

普段はざっくばらんで、男勝りで、運動が好きで、頼りがいのあるからは想像ができない程、か細い声でぽろぽろと言葉を零した。

深海に一人で居る夢を見た事、先生が目の前に居るのに、助けてくれない夢を見た事。そんな夢をここ数日立て続けにみていた事。

「…アキラと付き合ってるのに、私、せんせのこと、ばっかり。」
か細い声で、そう言うと、つう、との頬には一筋の涙がこぼれた。
(違うんだよ、ちがうんだ。)

「…ちげえよ、馬鹿。」

俺は震える声で、そう言って、の頭をゆっくり撫でた。

「我が侭いって付き合ってもらってんのも、俺。のそういう優しい所につけ込んでんのも、俺…。」

(先生も、ぜってーお前の事好きだったのに、黙ってた最低な奴も、俺。)

でも、喉につかえが出来たように、そこだけは声にならなくて。

「アキラ…」
「あと、1週間位かな。ぜってー、楽しい一ヶ月だった、って言ってもらえるように、頑張るから。」

俺は、の手を握った。夏場なのにひんやりしたその手のひらが、恋しくて、悲しくて、ぎゅっと唇を噛み締めた。

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