第7章 深海に沈めて
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先生の車で送れるキャパシティを越えていたという事もあり、私とアキラだけ交通機関で帰れというお達しが出た。
朴はやいのやいのと冷やかすし、まあでもこの状況じゃ仕方ないなあとアキラを見る。
「じゃ、一緒に帰るか。」
「…ん。」
ちらと見たタツキ先輩が和やかに携帯で手を振る。
(なんだかんだ、先輩なんだな)
結局ファミレスの中に戻る途中で、連絡先を交換して、
「詳しい事はよくわからないけど、困ったらいつでも僕に連絡してね。」
お茶やお菓子ぐらいなら、僕のお家でごちそうするよ。と笑う。
「だって、大切な仲間が苦しむ所は、あんまり見たくないからね。」
傷つけるつもりなんて微塵も無く放ったであろう先輩の言葉が胸に突き刺さる。
ぐっと押し黙っていると、その言葉の意味合いの差に気付いたのか、タツキ先輩は慌てて
「あ、えっと、違うんだよ」と言葉を紡いだ。
ぱっと私の耳元に手を添えて
(ちゃんも、もう仲間だよ?)
「…え?」
「アキラっちょも、ちゃんもおんなじくらい大事な仲間!だからこそ、どっちにも笑ってて欲しいな。」
ほら、席に戻るよ!と腕を引かれ戻って、手をつないだままテーブルまで戻ってしまったから、アキラにちょっぴり怒られたけど。
(ありがとうございます。)
心の中で感謝の気持ちを述べて、
ぺこ、とみんなに一礼し、アキラと2人で駅に向かう。
夜風に当たりながら、2人で駅に向かう。
「なあ」
「なーに?」
「あの日みてえだな」
俺が、告白した日。と、ぽつり、付け足すようにアキラは言った。
「…そうだね」
「な、」
「なに?」
「…て、繋いで…いい?」
目も合わさずに、アキラはそう言った。
「…ん、」
ぶっきらぼうに差し出した右手を、アキラがきゅっと握る。
「っあ〜!!」
「なによ」
「っちょー嬉しい。」
「…なにそれ」
ふふ、と笑ってアキラを見ると、目が合って。
あんまりにも綺麗に笑うものだから
(何故か、胸が、いたくて)
「今日、打ち上げ参加しなかったらよかったかも」
「なーんで、…手、嫌、だった?」
「ちがうよ。うん、…うん」
なんでもない、とまた前を向く。
(青紫の空が、やけに綺麗に見えるのは何でだろう、ね。)
(続)