第7章 深海に沈めて
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「ちゃんって、煙草吸うんだね。」
後ろから声をかけて来たのは、タツキ先輩だった。
「あ、そーなんです。ちょっとだけ。」
「堂々と外で吸ってるから、思わず声かけちゃった。」
夏休みだし、私服だし、元々何方かと言えば大人っぽい顔つきの為、今までとがめられた事が無かったため、考えた事も無かったが、
(…たしかに。)
純真無垢な瞳で見つめられて、日頃の素行の悪さをちょっと反省した。
「で、アキラっちょとはどうなの?」
唐突すぎる質問に、思わず吹き出す。
「どう…って、どう、なんでしょう。」
詳しくはアキラに、とふざけて切り返したら、先輩は頬をぷうとふくらまして(、なんて可愛い)
「アキラっちょ、教えてくんないんだも〜ん」
「あら、そうなんですか」
「なんかね、ちゃんの話するとき、嬉しそうなんだけど、寂しそうっていうかね、」
とんとん、と灰皿に灰を落として、ぎゅっと火を消す。
「寂しそう…?」
「よくわかんないけど。喧嘩でもしてるのかな、って思ったら、クッキー差し入れとかしてるし。」
僕にはよくわかんないや〜と首を傾げる先輩を見る。
「中、入りましょうか。吸い終わったし。」
「香水とか振らなくていいの?アキラっちょ怒らない?」
「ん〜、喫煙者ってことは知ってるし、大丈夫ですかね?」
ガラスのドアを開き、もう一度店内に入る。
「ねぇ、ちゃん」
「なんですか?」
その時、タツキ先輩が私の顔を見た。
「アキラのこと、本当に好き?」
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