第6章 堕ちる心と昇る泡
「で、ここのxに代入。」
「ほう」
「じゃあ、これが19になるでしょ?」
「あ、だからこれが…」
夏休みの初日、俺とは、ファミレスで宿題をしていた。
「…なあ、」
「なに?」
「なーんで、初デートがファミレスで宿題♡なんだよ!」
俺はむすっと頬をふくらまし、シャープペンシルを机に置く。
「どーせあんた31日にヒイヒイいいながら私とか泉に泣きつくじゃない、先手先手。」
「う、そうだけど。」
「…じゃああと3ページ終わったら買い物でも行こうか。」
「っしゃあら、そういう方が頑張れる。」
俺が大げさにペンを取ると、は呆れたように笑った。
「そいえば、部活…どんな感じ?」
数学の問題に取り掛かっているとき、は俺にそう問いかけた。
「…え?」
「ほら、夏場はイベントとか多いみたいだし、大変じゃないのかなって。」
「あー、新しい振りも増えるし、忙しいっちゃ忙しいけど、それより楽しいしヘーキ」
「そか、ならよかった。」
暫くの沈黙のあと、俺はゆっくりと顔を上げた。
「…さ、」
「ん?」
「俺と、あのー、仮とはいえ、その、付き合ったこととか、誰かに言った?」
ほら、マコとか、りーちゃんとか、お前の仲良い奴とかに
慌ててそう付け足すと、は笑った。
「私の口からは、言ってないよ」
「そ、そか」
「アキラは?浮かれて誰かに言っちゃった?」
ニヤニヤと笑いながら、は俺に顔を近づけた。
「い…」
(『よかったねアキラ、長い間好きだったみたいだし。』)
あの日の先生の表情がよぎる。
「俺の口から、は、言ってない。」
「…そっか。」
まあ、テスト期間一緒に登下校とかしてたから、気づいてる人は気づいてるかもね、
はそういいながら、もう一度宿題に取り掛かり始めた。
*