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深海のリトルクライ(アルスマグナ/九瓏ケント)

第4章 混ざり合って、紫


「…なーんだ、やっぱりアキラのこと好きなのか~よろしいよろしい。」

先生も少し驚いた顔をしてたけれど、すぐに先生の顔になって笑って、私の頭を撫でた。



「良い恋をしなさいよ。」


その声が、いつもよりも優しさを帯びていたものだから、思わず顔を上げる。なのに先生はいつも通り、笑っていて、

(違和、感…)

「じゃ、先生は部活あるから、お先!夏休みエンジョイしろよ~」

ひらひらと手を振り、先生は教室を出た。


私の心をいとも簡単に狂わせるのは、いつも先生だ。
だけど、その狂わせ方が、本当に、尋常じゃなくて

(もう、惑わされるのは、嫌だ。)


私は自分の心に、ゆっくりと蓋をするように立ち上がった。


「さようなら」


もう見えない先生の背中に小さくそう、つぶやいて。

(続)
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