第3章 決意とそれと
「もう…何がなんだかわからない…」
ぽたり、ぽたりと雫が落ちる。
煉瓦の壁に体重を預けつつ、流れる涙を何度も拭う。
私達は夜の路地裏にいた。薄暗く、不規則に揺れる灯りが近くを照らすだけだった。
エレンとミカサは、下を向いて黙っている。
アルミンが、しゃがみこんで嗚咽を漏らし始めた。
「…っ、う、うぅっ…、く」
彼の手には、祖父から最後に貰った麦の帽子が握られていた。
「私達には…帰る場所が、ない」
不意に、ミカサがぽつりと呟いた。
それに肩を揺らしたエレンは、下唇を噛んだ。
「帰る場所がなんだ。…俺達は生きてる。お前らがいる。帰る場所が無くたって、また作りゃいいじゃねぇか」
エレンの言葉が、私の胸を撃った。
脳裏に、忘れようとしていた事が、顔が、浮かんだ。