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残酷な世界には

第1章 今日


845年 シガンシナ区

この壁の中で生まれ育って早10年。
相変わらず高い壁が巨人達の侵入を阻んでいる。

父親には散々壁について聞かされていたが、どうやってこの壁を築いたのか全く分からない。

周りの建物より少し高い窓からぼーっと壁を眺める。

耳をすますと午後の賑やかな声があちこちから聞こえた。


「やめろー!」


「…え?」

突然少年の勇ましい声が響いた。恐らくケンカを止めに入ったのだろう。

目を細めてため息を吐いた。
確か、エレンとかいう奴だったか…負けず嫌いのバカだとはよく聞いている。


「…全く、何でこうケンカするのかな…」

1人で呟くと、風が大きく髪の毛を揺らした。

そういえば、今朝出ていった調査兵団はひどかったな…
頭の中で調査兵団達の姿を思い出し、またため息を吐いた。

壁の外。
それは、人々が絶対に興味を持ってはいけないものなのだ。
壁内は永遠に平和。
そう説かれ続けてそう信じきっている私達は、そんな平和な今日が、恐ろしいものになるとも知らずに、笑い声を響かせるのだ。
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