第7章 【照島 遊児】お前がいないと楽しくない
「どこ行く?ゆーじくん行きたい所ある?」
「そうだな…」
おそらくお姉さんは俺を誘っているんだろう。
ホテル代出してくれっかな。なんて考えていると、前から見覚えのある人が近づいて来る。
「ひろか…」
「遊児・・!?」
ひろかはキレイにメイクをして、髪の毛はゆるめに巻かれ、服装もいつもよりも大人っぽくて、足元は高めのヒールが履かれていた。
そして・・・
「ひろか、知り合い?」
ひろかの隣には年上の男性がいた。
「…うん。ただの同級生」
ひろかはそう言って俺から目線を外した。
ただの同級生。そう、俺たちはただの同級生だ。
「じゃぁな」
俺はそう言って、ひろかの横を通り過ぎた。
別にひろかが誰と居ようが俺には関係ない。
俺だって隣にはきれいなお姉さんがいる。
楽しい。すごく楽しい。
「ねぇ!歩くの早いよ!」
組まれた腕を思いっきり引っ張られ、身体がグイっと一歩後ろに下がった。
「…ちっ。面倒くせぇ」
今はとにかく遠くに行きたかったのに。
「はぁ?面倒くさい?…最低!」
パシンと俺の頬を引っ叩いて、彼女は去って行った。
彼女の背中を見て、俺はふと思う。
「そう言えば、あのお姉さんなんて言う名前だっけ?」
叩かれて赤く腫れた頬を擦りながら、見えなくなっていく後ろ姿に手を振った。
「なぁ、あの後どーなったわけ?あのお姉さんとは!!」
次の日、母畑がワクワク顔で近づいてきた。
「なーんもねーよ。…それより、ひろかが男と歩いてた」
「・・・マジ?どんなやつ?うちの学校?」
「…多分年上。爽やかイケメン。穏やかそうで…」
昨日ひろかの隣にいた男性の特徴を言えば言うほど、アリジゴクにはまってしまった虫けらのような気分になる。
「確かに、ひろかちゃん最近キレイになったもんな。年上と付き合ってれば当然か!」
最後の一撃を放たれて、俺は机に倒れ込んだ。