第2章 姉と弟
店長は私を気遣ってトーカちゃんのいる前だからと嘘をついてくれたのだろうけど自分の生い立ちがバレても何ら問題ない。
むしろ、このことはある意味私を知るものにとって周知の事実でもある。
だから、今更バレても私にとって何にも困ることはないのだ。
「夏菜・・・、それ本気で言ってんの?」
『うん。別にだからといって人の食事を今まで食べていて突然喰種になった訳ではないし、むしろ私は幼き頃からヒトしか食べたことしかないから半喰種というより喰種よりだけどね。』
「・・・ちょっと待って。頭がついていけない。」
『うん、そうだね。トーカちゃんにはまだ言うのが早かったかな。店長、また話は改めて。今日はここでお暇させていただきます。』
「・・・分かったよ。またいつでも来なさい。」
『はい、ありがとうございます。じゃあ、トーカちゃん。さっきの彼、"私の弟"をよろしくね。』
「ちょ、ちょっと待てよ!」
そんなトーカちゃんの言葉なんて聞かなかったかのように普通にドアを開けて普通に帰る。
あぁ、トーカちゃんに嫌われちゃったかな。
・・・まぁ、嫌われたら嫌われたでそれでグッバイ、おしまいだ。
あんていくの人とはこれからも仲良くする予定だし少し不具合が生じるかもしれないけど・・・まぁ、それはその時だ。
私に感情なんてない。感情なんて必要ない。
あったら余分なものだ。
"それ"があるだけで行動が制限されてしまう。
だから、これから先も私の人生に感情というものは存在せずその存在の意味すら知り得ないまま死んでいくんだろうと思ってた。
・・・そう、思ってた。