第1章 非日常 1
茫然だった
今目の前で起きた現実を受け入れられなかった。いや、受け入れたく無かった。
小さい頃、母に「呼び鈴がなっても、知らない人かもしれないから絶対に玄関の扉を開けちゃダメ」と言われたことを思い出す
要するにそれは今となっても同じこと
高校生になって一人暮らしをして、親に何を言われるまでもなく自由に過ごしていた私への罰なのかもしれない
だがそれにしたってデーターを綺麗さっぱり消す事はないではないか?
クラッキングを仕掛けてきた相手に対する怒りとともに、もう一つの感情が私を支配する
《私にも出来るのだろうか?》
復讐をしたいわけではない。ただ純粋に【クラッキング】というものに興味を惹かれたのだ。
今までだって話は聞いたことはあった。しかし、どれもこれも現実性が感じられなかった。どうせ、そう簡単には出来ない事だろうと思っていた。
けれど、今さっき私の目の前で起きたものは何?今まで遠くに感じられていた物が一気に距離を縮め現実感を増す。そして確信を持つ
《私にも出来る》
こうして、平凡な少女は一歩、また一歩と非日常に近ずき始めた