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薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第40章 旗



「一様、血が欲しいのですね? それは、羅刹特有の吸血衝動のはず……。どうか、飲んで下さいっ」

「い、いらん……」

「駄目です! 飲んで下さい!!」

「嫌だと言っている!!」

「……っ、だったら」


 志摩子は何を思ったのか、自らの口に血を含ませると強引に斎藤の頬を包み込んで口付けた。あまりの展開に目を丸くした斎藤は、思わず注ぎ込まれた志摩子の血を飲み込んだ。


「一様……」

「志摩子、お前……」

「私は、もう守られてばかりは嫌です。少しでも構わないんです、私にも……どうか一様を守らせて下さい」


 そう告げると、志摩子は斎藤の胸元に顔を埋めた。発作が治まったのか、いつもの黒髪へと戻る斎藤は、そのままそっと……志摩子を抱きしめた。


「……俺のために、痛い思いをさせて……すまない」

「いえ、大丈夫です。もう……全て終わったのでしょうか」


 二人は天へと目を向ける。うつ伏せになっているせいで、顔はわからないものの動く様子はない。本当に、今度こそ……終わってしまったのだろうか。


「天……」


 斎藤からそっと志摩子は離れると、家族の一人である天へと近付いた。しゃがみ込んで、優しく天の頭を撫でてやる。まだ何処かぬくもりが感じられて、それがまた更に悲しみを誘う。


「ごめんなさい。貴方を護身鬼にさせてしまったのは、私ですね。私にもっと、自分だけではなく誰かを守れるだけの力があれば……あるいは貴方や、栄兄様が護身鬼になることもなかったでしょうに。何も知らないまま、ただ守られて過ごしてきて……私はずるいですね。ごめんなさい」


 数回頭を撫でていると……突然、志摩子の手を掴む手。

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