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薄桜鬼 蓮ノ花嫁

第39章 燈



「遅くなってすまなかった、志摩子。あの日交わした約束を、果たしに来た」

「一様……っ、どうして此処に!?」

「言ったはずだ」


 斎藤は志摩子の方へと振り返る。志摩子の瞳に映った彼は、今まで見たことがないほどに綺麗に微笑んでいた。


「何処にいようとも、俺が必ずお前を守ってみせる」


 斎藤は南雲へと向き直り、対峙する。鬼の姿を為す南雲に対し、斎藤もまた羅刹の力を使うべく白髪に赤い瞳を宿していく。その姿が何を意味しているのは、志摩子にも瞬時に理解出来た。彼は自分の知らないところで、変若水を飲んでいたのだと。

 どういう経緯でそうなったのかはわからないが、今はそれを気にしている場合ではなかった。

 南雲が先に仕掛ける。鬼の姿をしているが故に、南雲の力は凄まじいものだ。しかし羅刹に変貌した斎藤もまた、南雲と互角に渡り合う。いや、どちらかと言えば少し斎藤の方が押しているようにも見える。


「人間ごときが、変若水に手を出すなんてね! 紛い物が、俺達本物の鬼に勝てるとでも思ってるの!?」

「新選組はずっと、武士の紛い物として嘲笑われてきた。だが、俺は思う。新選組こそ武士の魂を持つ者達の集まりだと。例え他の誰が、俺達を紛い物だと罵ろうとも。貫けば……誠になるっ!!」


 鈍い音が鳴り響く。斎藤の攻撃を、辛うじて防ぐ南雲だが少しずつ押されその身は後退し始める。斎藤の言葉に、南雲は鼻で笑った。

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