第3章 東峰 旭 (お誕生日おめでとう記念)
今日もバレー部をさぼってしまった。でも俺はもう、戦えない。エースと呼ばれる資格もない。練習がないとなんもすることないんだな。ぼんやりとそんなことを考えながら帰宅した。
東「ただいま」
と玄関を開けるとそこには見慣れたハイヒールがあり、奥では母親とつばさの楽しそうな声がした。
貴「よっ!旭、おかえり!!」
彼女は俺より5歳年上の従姉で建築関係のデザイン会社に勤めている。仕事はかなり忙しいらしい。それでも時間があればふらりとうちに来て一緒に夕食を食べている。
キレイな巻き髪、白く長い指にシンプルなネイルがよく似合う彼女だが、残念なことに中身はかなり男前、黙ってさえいればかなりモテているはずだ。
東「つばさ今日、早いんじゃない」
貴「そうなの!半年も抱えてたでかい案件が終わったから、久しぶりに定時に帰ってきたんだよ。今日は祝杯よ~~!あんたも私の労を労いなさい。それよりも旭の帰りも早いじゃない。バレー部どした?」
俺は何もいえず、2階にあがり自室で着替えていると、乱暴に階段を上がる音が聞こえ
貴「こらぁー、無視すんなぁ!」
と缶ビールを片手にもったつばさに扉を開けられた。
東「ぎゃー!ノックぐらいしろよ、俺今着替え中!」
貴「今更旭の着替え見てもなんとも思わない。一緒にお風呂だって入った仲じゃない」
東「子どもの頃だろ、いったいいつまでその話するんだよ!!」
俺は羞恥心でいっぱいになり、急いで彼女を廊下に押し出し部屋着に着替えた。
貴「で、旭。何があった」
東「・・・・」
つばさは小さいころから姉のような存在で、俺の性格をよくわかっている。そんな安心感からか、話しにくいこともつい話をしてしまう。
俺はポツリポツリと話し始めた
ある試合で徹底的にマークされ点が取れなかったこと。
俺にトスを集めたことに責任を感じているスガの事。
そして、口論になった結果、停学処分と部活禁止令を受けてしまった西谷の事。
新入生にも戻ってきてくれと言われたこと・・・。
東「逃げた俺には、もう戦う資格ないんだよ」