第6章 5日目
もう5日目か、と私は朝早く起きて狩りの練習を始める。
あれから私の手にすんなりと馴染んだ猟銃は狙った獲物を捕り逃さないほど確実に打つ。
乾いた破裂音が、静かな森に響きわたっている。
「おはようございまする」
「っわ、あ、おはようございます」
疲れた右腕を休める為にふるふると手首を振っていると、後ろから声をかけられた。
「このような朝から鍛錬にござるか?」
「はい、はやく認めてもらいたくて」
そう伝えれば嬉しそうに頷いてくれた。
本来ならばこの猟銃の先にいてもおかしくない彼が私の狩りを見守ってくれている。なんだかおかしな気分だ。
「あとどれくらいここにいられるのだ?」
「あと、今を抜いてあと2回太陽が昇ったら帰ります」
「そうか...」
残念そうに見えるのは、気のせいなのだろうか。
「よっと、朝ご飯できてますよ〜」
「うおっ、さ、佐助!」
へらりと笑った佐助はいつの間にか幸村の横に降り立っていた。狐ってもっと気難しくて怖いイメージだったが、だいぶそれも和らいでしまった。
「なんか、すみません」
「いいってば、ちゃんは頑張ってるんだから」
佐助も認めてくれて応援してくれている。こうなれば意地でも村のみんなにも認めてもらわなければ2人に申し訳なさすぎる。
「じゃあ先に戻ってるからね」
わざわざそれだけ伝えに来てくれたのか、と私は小屋へ歩みを進める。
幸村も私の後ろについてくれる。
──...を、
「え?」
──わ...
「何か言いましたか?」
「何も言っておりませぬが」
「きのせい、でしたか」
ふと、誰かが話しているような気配がした。本当に本当に小さな声でぼそぼそと話しているような。
空耳というのはよく聞くし、それと同じ類だろうと私はあまり気にしなかった。