第7章 * "Great King"
「俺は及川徹!青葉城西バレー部の主将でーす」
「及川………徹…!?」
そう名乗ると、彼は両手でピースサインを作り私に向けて、パチッとウインクをした。
…私はこの人の名前を知っている。
及川徹……確かこの人、過去にベストセッター賞を受賞したことがある人だ。
当時はまだ私も部活をしていたから直接会場には行けなかったけど、後日同じクラスの男子バレー部員から話を聞いた。
………その及川徹が今私の目の前でニコニコと笑って立っているなんて。
ていうかなんで彼はこんな所に居るんだろう。
今日は烏野との練習試合……………………………
………あれ…?
主将がここに居るってことは……もしかして………
「あのっ…!!試合は終わったんですか!?」
「あー、俺軽く足捻挫しちゃっててさ…あっちの様子わかんないんだよね〜」
ということは、まだ試合は終わってない可能性もある、ということだ。
及川さんの言葉に、私はホッと胸を撫で下ろした。
そうと決まれば急いで体育館に向かわなければ。
及川さんに軽く頭を下げ別れを告げれば、私は廊下を駆け出そうとした。
「……………あ"」
―そのとき私は気がついた。
影山くんに連れて来られる間、私の意識はあまりハッキリしていなかった。
バスを降りてすぐだったから、校内地図の確認も出来ていない。
それに、此処に来るのは今日が初めてだ。
―――つまり私は
体育館への道を…知らない。