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【マギ】ジャーファルさんに愛されて。

第12章 【淡い夢】


*  *  *  *

「……シン、今…なんて?」
「ん? サラクの皇帝…『シエル』が今日、我が国シンドリアと国交を結びに来―――――」
「シエル…っ」

ざわッ

荒々しく揺れる影。
私は震えが止まらずに、ただ床を見つめる。
ジャーファルが隣で…肩を揺すって何か言っているけれど、聞こえない。

ただ、記憶が蘇ってくるだけ。


『一生国のために、此処にいてもらう』
『俺から、この国から…、逃げられると思うなよ』
『俺たちは同じ血が流れてる…、無慈悲で残酷な血族だ』


同じ顔なのに、容姿なのに。
次期国王として育てられた私の弟は、いつしかオカシクなっていった。
力で他国を支配していき、国民に奴隷同様に扱い…。


双子である私を、愛した。


『ずっと一緒だよ…、シェリル』



「うわあぁあああぁっ!!」
「シェリル、どうしたんですか?!」

心の奥底に封じていた過去を思い出し、私はジャーファルの胸の中に飛び込んだ。
震える手で、袖をギュッと掴んで離さない。

「…シンっ、シェリルを部屋に連れて行きます」
「ああ…、そうしてくれ」
「さぁ、シェリル行きますよ」

動けないでいる私の体を支えながら、彼は私と部屋を出た。
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