第2章 レディハートに挨拶を[ロー]
「返して!!」
パンクハザードを出航したサニー号の上、の金切り声が響きたわたる。
能力を使いローへ攻撃を仕掛けるが、あっさりと阻止されその白い肌は怒りで紅潮していた。
「またやってんの?」
「ふふっ、仲がいいのね」
その一部始終をナミとロビンが眺めていると、が足音も荒く戻ってきた。
「トラファルガーってほんと信じらんない!」
「ちょっと、落ち着きなさいよ」
まぁまぁと宥めるナミに、落ち着いていられる訳ないでしょうとは声を上げる。
「それにしても心臓を盗るなんて、随分と情熱的ね」
ロビンが微笑む。
確かにパンクハザードで心臓を盗られて以来、はローを追い回す日々である。
ローはちょっと他人には見せないような愛し気な表情をに向けているのだが、如何せん本人には全く伝わっていない。
「まぁ悪趣味には違いないけどね」
ナミは苦笑いし、未だ怒りに震えるを眺めた。
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甲板でローが眠っている。
懐に心臓があるはずだ、はそっと近づき手を伸ばした。
「寝込みを襲うなんていい趣味してるな」
捕まれそうになった腕を咄嗟にかわし、距離を取る。
「いい加減に心臓返しなさいよ!」
これ見よがしに自分の心臓を掲げるローに、既に怒りは頂点に達している。
「私のことは放っておいてよ!トラファルガーなんて嫌いよ!」
唇をわななかせ足を踏み鳴らす。途端、能力の制御が効かなくなったのか突風が吹いた。
ローは手から滑り落ちそうになる心臓を落とさないよう思わずぐっと掴み、は呻きながらローを思いきり睨み付けた。その目には涙が溜まっている。
ローは溜め息をついた。
「悪かった」
「…心臓返して」
ゆっくりとローが近づく。
「返したら嫌わないか?」
「は…?」
「返したら名前で呼ぶか?」
何を言ってるかわからない、という表情をするの目の前に立つ。
「返しても俺のところに来るか?」
規則正しく脈打つ心臓をの前に掲げる。
その赤くなったローの顔を見上げてふと気づく。
「もしかして私に構ってほしくて?」
「悪いか…」
最早完全に表情を隠してしまったローにすっかり毒気を抜かれ、笑みが溢れた。
「ローってバカね」