第1章 平凡腐女子ですよ
少し、顔は見えないが声音が弱々しく聞こえた。相当、厄介な呪いなのかな?
ーー我の世界の住人には、さわれぬ様に呪いをかけたのだ。それも孵化を早める呪いも一緒になーー
「え?それって…」
ーーああ、魔王の誕生が目当ての犯行だったようでな…ハァ。頭が痛い話だが本当に触れないのだ。解除の呪文も受け付けず…ただ魔王の子が産まれてくるのを見ている事しかできない…ーー
「え、魔王が産まれるんじゃなくて、魔王の子が産まれるんですか?」
上手く頭の中で整理したいが、色々な情報が入ってきすぎて何がなんだか…。
ーー魔王自体は、前の勇者召喚の際に討伐されたんだが、殺られる寸前に魔力を、卵に変換して子をなしたみたいでな…討伐した勇者がその卵を壊そうにも凄まじい瘴気すぎて、壊せなかったのだ。勇者は魔王の卵を孵化させないよう、時を止める魔法をかける事しかできなかった…ーー
「あーと、分かりました。上澄みぐらいは理解ができたかもです。で、もしかして盗んだヤツがかけた魔法の、あなたの世界の住人はって事は…」
ーーああ、異世界の者なら触れる。それも、我の恩恵付きだからな。だだ漏れの瘴気にも強く、それに今叶えようとしてる願いの一つに死ににくい身体もセットだ。問題なかろう?ーー
あ、ありまくりですよー?!
私に、その魔王の卵の孵化を止めろって事だよね?あ、でも触って魔法かけるだけか…思ってたより楽じゃないか??
ーー我の世界で起こった不祥事に巻き込む事も忍びないのだが、お願いできないだろうか?ーー
案外簡単そうな内容だし、それに男になれる…あとちちくり合い…
用事を済ませて、BL観賞に勤しもう!そうだ、そうしよう!
「いいですとも!」
ニコヤカな笑顔と共に返事をすると、目の前に真っ黒な四角いドアが現れた。どこで○ドアじゃないが…色違いのそれみたいですけど。
ーーありがとう、優しいお嬢さんーー
ドアを開け、中に入ると優しげな声でお礼を言われた。
くすぐったい感じがして、照れ臭そうに「気にしないでください」と言うとドアを閉めるために手を離した。
ーーああ、それと謝っておかねばなーー
閉まる間際に、何なんだ?
もう数センチで閉まるぞ。
ーー願いに含まれていた男同士の恋愛だが、あれは我の世界では常識だ。ーー
パタンーー
願い事が一つ、勿体無い事になりました。
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