第1章 平凡腐女子ですよ
「新しい第一歩っと…踏み出したはいいが…うぅ…」
勢いと、オタク心に揺さぶられて入ってみた真っ白の世界は思いの他静かで、少し身震いしてしまいそうになった。
「ちょ、ちょっと一回戻ろうかな」
意気地のない私は、きた道を引き返そうと後ろを振り向くと先程まで存在していた玄関の扉が消えていた。
ーー見渡す限り白の世界。
「…軽率すぎたな…私」
会社に今から行こうとしていた矢先に、こんな世界に来たら職場は無断欠勤になるのではないだろうか。
今まで真面目に勤務してきたのに、無断欠勤とかもう会社に顔出せない…
迷惑になる事だけは、したくなかったのに…って今更心配してもしようがないか…
でもーー
「はあー…白だけじゃつまらない…」
現実世界の心配はしたって、どうしようもない事はわかった。
だが、せめて視界に変化がほしい!
「男がみたいー!おにゃのこでもいいー!人ー!」
ーークスクスーー
「ん?笑い声?」
それも、幼い感じの…こう成熟し切ってない少女のような。
ーー……ーー
「気のせい?」
また無音になってしまった世界。
願望ゆえの、声が聞こえてしまったのか…
「幼女でもいい、このさい老人でもいいよー…人と話したい…」
ーー人ではない、我は用無しだなーー
!!
今度は聞き間違えではない、ちゃんと喋った…はず。