第10章 オマケページきょうこ篇 マフラー
あたしは、健チャンの自転車の後ろに乗るのがずっと夢だった。
たまにももちが後ろに乗っけてもらって登校して来ると、秘かにヤキモチを妬いてた。
だけど今となっては健チャンの自転車の後ろはあたしの指定席。
大スキな健チャンの背中の体温をいつも感じられるこの場所が、最高の特等席。
寒くなってきたけど、二人ピッタリとくっついていれば平気。
あったかい健チャンの背中。
だけど…
「さすがにマフラーないと厳しくなってきたな。」
下校時、自転車置き場に向かいながらあたしがそう言うと、健チャンは隣でにっこり笑った。
そして自転車置き場に着くとカバンからマフラーを取り出した。
「あ、それ!修学旅行で買ったやつ!」
「そ!」
修学旅行で行った北海道で、健チャンはずっとマフラーを探していた。
最終的に見つけたのはバカみたいに長いやつ。
「改めて見るとホント長いね。」
その言葉に健チャンはニヤニヤしながらあたしのほうを見る。
「何?」
「まだわかんない?どうしてこんなに長いの買ったのか。」
「え?」
するとあたしの首が一瞬にして暖かくなった。