第2章 悪魔との出会い
「うう、寒っ」
家を出ると、まず先に冷たい北風が体を包みこむ。
まだ初秋とはいえ、標高の高いこの地域の夜はそれなりに冷え込む。
やっぱり買い物には行かないで、今ある食材だけで何かつくろうかなと考えていた時、一人の青年が目についた。
綺麗なブロンドの髪に茶色いコート。
「あ」
私は小さくそう言ったがその人には聞こえたようで、私に顔を向けた。
「……やっぱりヴェント兄だ」
私がそう言うと、その人は私の姿を確認して苦笑した。
「やっぱりって……違う人だったらどうするの」
ごもっともなことを言われ、私は寒さで固まった頬を持ち上げ笑う。
このヴェントという人は、いわゆる私の幼なじみだ。
歳も近く、優しく穏やかな彼は常に私の兄的存在である。
顔も性格も、更には頭もいい自慢の幼なじみ。
なのに縁談の話は全く聞いたことがなくて、それが不思議でならない。