第13章 Tears
あの頃の気持ちのまま、どうして行けなかったんだろう。
あの頃だって、大事な人だってことは分かってたのに。
結んだ指先も、柔らかな寝息も、肩を包む温もりも全部、この腕の中から無くなるなんて、思ってもみなかった。
ずっと側にあるって思い上がってた。
あの頃彼女が流した涙が、今の俺の頬を伝って落ちてくる。
誰と付き合っても彼女以上がなくて。
これだけ年月が経っても大人になりきれなくて。
割りきれなくて。
諦めきれなくて。
ずっと彼女を探してしまう。
彼女の面影を求めてしまう。
あの日見た星座のように、同じ場所でずっとグルグル回ってる。
解けた指先は、ずっと宙に浮いている。
優しい手を、柔らかな声を、彼女を探したまま。
告げられなかった言葉も、伝えたい想いも。
為すすべもなく、ただ密やかに降り積もるだけ。