第8章 まさかの展開
笹倉家に着くと、私が来ることを知っていた様子の陽太が駆け足で玄関まで来てくれた。
「ともー!おかえり!あとしゅーにぃも!」
「ただいま・・・というか、お邪魔します(笑)」
「俺はオマケか」
まさか陽太1人でお留守番?龍は?こんな幼い子達だけでお留守番って危なくないのかな・・・などと思っていると、リビングのドアからひょこっと顔を覗かせた悠輔。
「あ、悠くん、いたんだ!」
「うん、久しぶり」
靴を脱いでから、両手を伸ばして抱っこを要求する陽太を抱き上げ、リビングに入る。そして後ろから聞こえるのは、驚いた琇の声。
「そんな呼び方してたっけ?」
「本当は呼び捨てにしてって言ったんだけど」
「む、無理だよ、まだ!」
共通の趣味で、あれからも連絡し合っていたそんな時、年下だからもっと気楽に呼んで、と悠輔から言われたのだ。
「“悠くん”じゃダメなの?」
「ダメじゃないけど・・・年下の俺が呼び捨てなのに、年上のともがくん付けって、どう考えてもおかしいじゃん」
「私は年上とか年下とか気にしないから大丈夫!」
私の返答が気に入らないのか、あからさまにブーたれる悠輔。その内呼べるようにした方がいいのかな、と内心汗かいていると
「じゃあ、俺も」
「、え?」
「呼び捨てで呼んで」
どうして笑顔なのかはさて置き、何故に琇まで・・・
「そ、それは無理だよ!敬語をやめるのだって勇気いるのに、呼び捨てなんて・・・」
「何で?」
「だって琇さん年上・・・」
「さっき年上とか年下とか気にしないって言ってたもんね?」
・・・・・・・・・やられたー!!!!!
「いや・・・た、確かにそうは言った・・・かも、」
「かも、じゃなくて?」
「・・・言いました」
確信しました。ここの兄弟達はみんな、S気質。
「まぁ、俺もすぐにとは言わないからさ」
でもそれって、いつかは絶対呼び捨てで呼べって言ってるんだよね?そうなんだよね?
・・・鬼!
「とも」
「・・・何?」
「顔に出てる」
「・・・・・・ふんっ!」
「痛って・・・何で叩くんだよ」
まさか悠輔まで同じことを言ってくるだなんて。さすがに腹が立ったので問答無用で彼の腕を叩いた。